厚生労働省は11月26日、瀬戸内海の島にあるハンセン病国立療養所の「大島青松園」(香川県高松市庵治町)と、庵治・高松両港とを結ぶ官用船を民間委託する方針について、「現段階においていまだ十分な理解が得られていない」として来年度からの民間委託を断念し、引き続き入所者と話し合いを継続していくことを明らかにしました。

 これは、厚生労働省国立ハンセン病療養所管理室の古川浩二室長が、日本共産党の高橋ちづ子衆院議員に説明したものです。

 厚労省は、国家公務員である船員2人が今年度末で退職することに伴い、来年度予算の概算要求で退職者の補充を行わず、船舶の1隻を民間委託する方針でした。

 古川室長によると、来年度については、2人に対して1年間勤務してもらえるよう再任用を働きかけた上で、現行の運航を継続するとしています。

 この問題で、国から同園自治会に打診があったのは8月のことでした。「入所者が夜間、急変して病院に緊急搬送する場合、民間委託で役割を果たせるのか」「民間委託より直接雇用のほうが経費は安い」などの声があがりました。

 同園自治会は「民間委託に反対する基本方針」を国に伝え、全日本国立医療労働組合(全医労)の同園支部も直営運航継続の要求書を同園長に提出しました。

 日本共産党の仁比聡平前参院議員、樫昭二、白川容子両県議が9月15日、同園を訪れ自治会長や全医労支部と懇談。仁比氏は「国はハンセン病隔離施設を島につくり、強制的に隔離政策を進めてきた責任をとるべきです。官用船を国の責任で運航させましょう」と激励しました。

 同月28日には、高橋議員、仁比前参院議員、松原昭夫党香川県委員長らが、国が運航に直接責任を持つよう厚生労働大臣に要請しました。

 また、党県議団、高松市議団は地元自治体に対して官用船を直営職員で運航することを国に求めるよう働きかけてきました。

 県議会は10月14日、国直営の運航維持を求める意見書を全会一致で可決しました。

 「民間委託を来年度は断念」とする厚労省の説明を受けて高橋議員はいいます。「来年度1年間とはいえ、国の方針を変えさせたのは入所者自治会や地元自治体をはじめ、多くのみなさんの運動の力。民間委託を完全に断念させるまで引き続き国に働きかけていきたい」(しんぶん赤旗 2010年11月28日)