国の上告断念を受けて、原告・支援者らと喜び合う仁比氏、2012年12月、東京・霞ヶ浦の農水省前

国の上告断念を受けて、原告・支援者らと喜び合う仁比氏、2012年12月、東京・霞ヶ浦の農水省前

 

仁比氏 少数で物事動かす
馬奈木氏 共産党は決定的な力

仁比そうへい氏 国会議員は本来、主権者の負託を受けた国民の代表です。ところが、主権者の中に足場を持たず風任せで、選挙のときは頭を下げるけれども国会に行ったら公約を裏切って平気な議員が山のようにいる。そこに国民の怒りや無力感があると思います。

馬奈木昭雄氏 各政党はそれぞれの利害を代表しているわけですが、自らどの利害を代表するのか、はっきり言っているのは日本共産党だけで、他党はそれを隠して票をかすめ取ろうとします。

◇  ◇

仁比氏 そうですね。代表する利害や信念が違っても、少数意見を尊重し、徹底して議論を尽くして物事を決める。それが国会本来の姿なのにそうなっていない。密室談合で強行採決する。情けない党利党略のかけ引きに終始する。これを本当に国民を代表する舞台に変えることが求められています。

 国会では、一人の議員が国民の声、被害をしっかり受け止め、絶対に揺るがずたたかうことで状況を変える。たとえ少数であっても物事を動かす力があることを何度も経験してきました。

 薬害肝炎の根本的な解決をめざす肝炎基本法の制定を被害者、弁護団、運動がずっと求めてきました。民主党はそれを実現すると公約しましたが、政権に就いたらできないと後ろ向きの姿勢が表面化しました。

 被害者の怒りが爆発する中、私は民主党政権の閣僚に直談判しました。「先送りできると思ったら大間違いだ。あいまいにすることは絶対に許されない。政権のアキレスけんになりかねない」と警告したのです。その後、数日で事態は大きく変わっていきました。

 日本共産党は国会では少数会派ですけども、被害者のみなさんには本当に熱く受け止めていただきました。政治的な解決が必要な時に物事を最後決めていくのは、具体的な一人ひとりの人間なんです。そういう力に私はならなければならない。

馬奈木氏 全く同感です。やはり一人の議員の奮闘がないと物事は動かないし、その奮闘が多くの議員に伝わっていく。分かりやすいのが諌早干拓による有明海の漁業被害問題で、佐賀では自民党をはじめ県議会が全会一致で潮受け堤防の開門を求めています。

 背景には共産党県議が孤軍奮闘してきた長い歴史がありました。その中で漁民を先頭にこのままではおかしいという問題提起があり、地元出身の自民党で副大臣2人(当時)も開門を求めざるをえないという状況をつくり出してきたのです。同じことが長崎でも起きようとしています。

 被害者を先頭に解決にはこれしかないという道筋を打ち出してたたかえば、やはり従わざるを得ない状況が出てくる。そこで共産党が一貫したたたかいの積み上げで最終的には一番決定的な勢力になる。これが有明海を取り戻すたたかいで起きている現象だと思います。 
(つづく)

【よみがえれ!有明訴訟】 1997年、国営諫早湾干拓事業(長崎県)で潮受け堤防が閉め切られたため、宝の海といわれた有明海の潮の流れが停滞、水質悪化によって甚大な漁業被害が発生。大打撃を受けた漁業者らが、工事差し止めと堤防開門を求めて2002年、佐賀地裁に提訴。10年、福岡高裁は国に13年末までの開門を命じ、国の上告断念で判決が確定しました。