仁比氏 勝つまで戦う
馬奈木氏 国民利益のために

馬奈木昭雄弁護士 裁判を勝つための取り組みで大事なのは、どうすれば解決するかの確信を裁判官に持ってもらうことです。川辺川利水訴訟は一審熊本地裁では原告敗訴でしたが、福岡高裁では見事に取り組みが成功し、国が上告もできない判決を築き上げました。

 川辺川利水訴訟でも諫早開門訴訟でも、取り組みのスローガンの一つに「われわれは事業の妨害者ではない。国民の利益のための事業の真の実現者である」というのがあります。政権担当能力を持つために努力を積み重ねていく。予算はあるのかと問われれば、ここにあると提起していかねばなりません。

 川辺川利水訴訟が勝ったのも終極的にはそこです。水をほしいという農民がいる一方で、水害防止を求める住民の要求には「ダムでは応えられない」という事実を突きつけた。その上で、ダムによらずに、それらを実現する方法を明らかにしてみせたところにあると思います。

仁比そうへい参院比例候補 馬奈木先生の聞き書き集『たたかい続けるということ』の中で一番感動するのはやっばり水俣病のたたかいです。若き馬奈木弁護士が福岡から一人で水俣に派遣された。加害企業チッソ支配の街にいわば一人乗りこむんですね。

 「水俣生活の最初の記憶は暗い夜道です。村八分を恐れる患者さんたちのために人目をしのび夜になって患者宅や漁師宅を訪ねるのですが、その暗さは想像を超えていた。家の中はそこもまた暗闇、一間しかない部屋に数人が横になっているのがかすかに見える。私は貧しさの意味を夜道の暗さで初めて実感した」というくだりがあります。被害を生み出す加害の構造をこのように言語化する力が私たちに真剣に問われていると思います。

 続けてこうおっしゃっています。「暗がりにまぎれて訪ねた海辺の家で近所の漁師さんたちと話し合っていると、家の主婦が叫ぶのです。『みんなで手をつないで助け合えっちゅうわけね。私はやるよ』。この感動が私の信念を支えてきたのです」

◇ ◇

 一人の覚悟を決めた弁護士の力が被害者を励まし、加害の構造を自覚させ、立ち向かうことによって本当に人間らしさを取り戻していきます。権利を実現するために団結し、人間性を取り戻すこの飛躍の瞬間こそ、たたかいの始まりであり、その原点を私たちが本当に貫いてたたかいぬくなら、絶対に勝利できる。「なぜなら、勝利するまでたたかい続けるからだ」。この馬奈木先生の哲学を私たちが多くの分野で磨いていかなければと思うのです。
(つづく)

【川辺川利水訴訟】 熊本県五木・相良両村に建設予定だった川辺川ダムを水源とする国営川辺川総合土地改良事業の利水計画をめぐり、地元農民らが事業の無効を求めた訴訟。福岡高裁は2003年、事業推進の法的根拠とされた3分の2以上の農家の同意はなかったとして、事業を無効と認定しました。流域自治体首長からダム反対が相次ぎ県知事は08年、白紙撤回を表明。川辺川ダム建設は中止に追い込まれました。