法務委員会 2019年4月9日

 

<賃金支払い確実に/長野の技能実習違反 仁比議員が要求>

 

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。

外国人労働者問題について、三月二十日のこの委員会の質問で、お手元にお配りしていますが、長野県のK協同組合と今回も申し上げておきますけれども、ここが監理団体になって金属加工の技能実習として受け入れられているはずの実習生が、ペット飼育、餌やりや掃除を朝から夜まで、あるいは休日もさせられていたと。その実習生たちが社長に激しい声でどなられ続けているというこの問題について取り上げまして、私の質問は三月二十日でしたけれども、四月の一日にはNHKがニュース9で、この社長の激しい暴言、パワハラの様子について放送もいたしました。出入国在留管理庁が発足をして、先ほど来お話のあっている外国人労働者の新たな受入れ拡大が行われる日にそうした報道がされたわけですね。

技能実習機構が、やっとと言うべきだと思いますけれども、四月の三日にこの現地の実地検査を行いまして、実習生が保護されました。ですので、技能実習機構や法務省、厚労省はこの実態について聞き取りももう既にしておられるはずだと思いますが。

そこで、まず大臣に、この事態についての認識と併せて伺いたいと思いますのは、つまり、実習外の作業をこの社長の指揮命令によって早朝から深夜まで、あるいは日曜日といいますか、休日もこれさせられているわけです。こうしたものについては、未払の賃金としてこれをしっかり払わさせないといけないと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(山下貴司君) まず大前提として、個別の事案の詳細については、今後の調査への影響あるいはプライバシーの保護等の観点からお答えは差し控えさせていただきます。

その上で、一般論といたしまして、技能実習法令違反への対応について、あくまで一般論として申し上げれば、受入れ企業が技能実習生に対して技能実習計画とは異なる作業を行わせていた場合、技能実習法違反となり、事案の内容に応じて、改善を求める勧告、指導、改善命令のほか、技能実習計画の認定の取消しを行うこととなります。

また、賃金未払その他の法令違反が認められた場合についても同様に、事案の内容に応じて、改善を求める勧告、指導のほか、労働基準監督機関への通報等の必要な措置を講ずるということを考えております。

○仁比聡平君 労基への通報というのを講ずるとおっしゃっていて、これ、万が一この会社が払わないということになれば、賃確法などの取組も求められていくということになると思うんですが。

もう一点、大臣に確認をしたいと思うのは、前回も申し上げましたけれども、技能実習の一号、つまり一年目の実習生がこの中にいます。そうすると、二年目に向かう試験を受けなきゃいけないですよね。この件について、実習生からのお話によると、一年目の試験を会社で受けなければならない、できなければ帰国させると、その実習先の社長がまだ言っているという話があるわけですよ。試験で使うフライス盤加工ですけれども、その試験を受けていく、合格していくためには、その作業、その機械を実際使わなきゃいけないんだけれども、まだそれは教えてもらっていない、うまくできるかプレッシャーで怖いですと言うんですね。

実習継続が困難になったときに適正な実習先をきちんと確保していくという取組はもちろんやらなきゃいけない、法務省は。加えて、技能実習の二年目に進むにはそういう試験もあるわけですから、だから、これがちゃんと万全にできるように、是非ともこれやらなければならないと思うんですよね。

これ、実習生たちはベトナムから来ていますけれども、前回紹介した手紙の一節だけ。今帰国したら、借金の元金が残ったまま二年間何もできなかったことになります。やっぱりこの苦しみをこのままにしておいてはいけないと思いますが、大臣、いかがですか。

○政府参考人(佐々木聖子君) 先ほど大臣も申し上げましたとおり、個別の案件については言及を差し控えさせていただきますが、今委員御指摘のように、実習計画がきちんと計画どおりに行われて、なおかつ当初の予定どおり、一年目、二年目、三年目に進んでいくということがそもそもこの技能実習制度の前提でございます。その途上でそれが進まないそれぞれの事情がありましたときには、技能実習機構、それから制度所管庁である法務省、それから厚労省も協力をして実態の解明に努めるとともに、必要な支援、これは今御指摘の転籍支援ということも含めてになると思いますけれども、これを行っていくというのは当然でございます。

○仁比聡平君 その当然の対応をこの実習生たちにきちんと行ってもらいたいと思います。

そこで、私、前回の質問で、労働組合に彼女たちが相談をして、実習機構に相談をしたのは三月中旬であり、三月十八日に申告したと。四月一日にNHKのニュース9で報道され、実地検査が行われたのは三日なんですが、実はこれ、実習機構は昨年の六月くらいにこの実習先の実習生からの相談を受けていたというふうに聞きますけれども、これは本当ですか。

○政府参考人(佐々木聖子君) これも個別の案件についてお答えを控えさせていただきますけれども、一般論として、申告がありましたならば、それはできる限り早期に、例えば関連する場所に実地検査を行うなど必要な対応を行っておりまして、制度を共管する厚生労働省及び外国人技能実習機構と連携の上、この技能実習生からの相談あるいは申告に適切に対応してまいりたいと考えています。

○仁比聡平君 私、とんでもない話だと思っているんですよ。七月の三十日、去年の七月三十日付けで、今回保護をされている対象になっている実習生が上陸許可を受けているんですね。つまり、新法、二〇一七年の十一月に施行された新法の下においてこのK協同組合が監理団体として許可をされ、その監理団体が受け入れる実習生として実際にベトナムの若い女性がこの会社に実習を始めているわけです。その処分を行ったのは入管なんですよ。ところが、その前の段階でこうした実態の相談が既に行われていたということなんですよ。これは余りにも無責任なのではありませんか。

今長官から、問題があったときには実地検査を行うんだというふうにおっしゃったけれども、実地検査を行ったのは四月の三日のことでしょう。その間に新たな実習生を送り込むことまでやってしまっている。ここにちゃんと反省をして、これ真剣な反省をして、少なくとも速やかな実地検査ができる体制をこれ現場につくっていかないと、これ構えだけ言っていたって全然どうにもならないんじゃありませんか、大臣。

○国務大臣(山下貴司君) まず、個別の事案ということではないのですが、技能実習生からの相談等の体制について、これを拡充する必要があるとの御指摘、これは基本的には私どももそう思っております。

一般論として、機構では、これ電話、電子メールなどの、手紙などによって現在八か国での相談、申告が可能となっておりますが、とりわけ最も需要が見込まれるベトナム語に関しては、今月から母国語相談の対応可能日を従前の週三日から週五日へと増やして相談体制の更なる拡充を図っているところでございます。また、地方事務所等における人員等も増やして申告、相談受付等の体制を拡充していると承知しております。

ですので、法務省としても、共管する厚生労働省などと連携の上、こういった機構の取組についてもしっかりとバックアップさせていただきたい、強化させていただきたいと思いますし、法務省としてもその御指摘等を踏まえて、一般論としてそういった相談に迅速に対応できるように連携をしてまいりたいと考えております。

○仁比聡平君 速やかに不正な扱い、権利侵害を受けている実習生たちを保護しなければ、これは重大なことになるわけですよね。

ちょっと時間がありませんから、もう一件、別の角度で伺いたいと思いますが、西日本新聞の三月二十四日の記事を二枚お配りをいたしました。「ベトナム人狙い留学詐欺? 学納金一人百万円 七十人被害か」という大見出しで、日本語学校をかたる東京都内の会社が、日本への留学を希望するベトナム人から一人当たり約百万円の学納金を送金させた後、連絡が取れなくなっている。被害者は七十人近くに上るとの情報もある。日本語教育振興協会は、詐欺の可能性が高いと見て法務省に通報するとともに事実確認を進めているということなんですね。

これ、外務省にお尋ねをしますが、二枚目の記事、だまされた留学仲介業者は十社以上との情報もあり、被害拡大が懸念されるというような状況なんですけれども、こうした出入国に関する事件については、これ、どんな認識ですか。

○政府参考人(高橋克彦君) お答えいたします。

ベトナム人からの留学目的のビザ申請に際して、例えば在留資格認定証明書を偽造して何か申請するとか、そういう事例があったかというのを確認してみましたが、特にそういうものはございません。

いろいろな不正事案が生じているということを受けまして、在ベトナム日本国大使館では、必要に応じて、例えば留学ビザの申請者に対して面接を実施して、虚偽申請がないか、何か問題がないか等の確認は行っておりまして、こういう形での引き続きのビザ審査を適正に行って事前にこのような事態が起こることの防止に努めていきたいと、そういうふうに考えております。

○仁比聡平君 その防止に努めていきたいというふうにおっしゃるそのポイントといいますか、それは実体がないわけだから、これが入国されるということには至らないはずなんですけれども、現に日本への留学を希望するベトナム人がこうして百万円というのをこれ取られてしまっているということなんですよね。それは現実なんですよ。

この問題について、一枚目の記事の一番下の段に法務省のコメントがあります。法務省入管入国在留課は、学院は告示校ではなく、留学生受入れはできない、もし事実であれば刑事事件になるが、うちが介入できる話ではない。この最後のうちが介入できる話ではないと、これ余りにも無責任じゃありませんか。これ、大臣、日本語学校をかたって留学の希望者が現に被害に遭っていると、これ全く問題にしないみたいな話だと、これは責任逃れじゃありませんか。

○政府参考人(佐々木聖子君) 今の記事でございますけれども、入管としてコメントをした部分につきましては、この実体がない日本語教育機関がまるで実体があるように装うなどして授業料等を受け取ったとすれば刑法の詐欺罪に該当する可能性があるが、入管当局としては犯罪捜査の権限はないという趣旨で申し上げたものと承知しております。

当然ながら、出入国在留管理庁におきましては、本事案について、関係省庁とも連携し、情報収集に努めているところでございます。

○仁比聡平君 もう時間が来たのであとは次回に譲るしかありませんけれども、これ、留学生を送り出す母国の方の仲介業者というのは、ホームページ上でこの株式会社杉並外国語学院を知っているぐらいというようなところが百万円などというような巨額の、高額の学納金名目でのお金をベトナム人青年たちから取るということになっているわけですよね。そんなことが許されているような二国間関係でいいんですかと。

先ほど来お話のあっている覚書あるいは私は法的拘束力のある二国間協定が何としても必要だと思いますけれども、そういう点についての認識を改めて次の機会にお尋ねをしたいと思います。

今日は終わります。